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カントリーエッセイ
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2003/09/13号
クリームソーダ

小さい頃は週末になると、父の自転車の後ろにのって、決まってどこかへ出掛けた。
どこへ遊びに行っていたのか全然覚えてないんだけど、帰りにかならず(ほんとに毎回かならず)同じ喫茶店に立ち寄っていたのは確かだ。

扉を開けるとお店の中は薄暗く、カウンターの中に立ったお兄さんが、「いらっしゃいませ。」と言いながら、ニヤリ〜と横目で笑う。
このお兄さんの表情が、デビュー当時の的場浩二に似ていて、いつもわたしはできるだけ遠くのテーブル席を探し、カウンターに背を向けて座った・・

ここへ来ると、かならず“クリームソーダ”を注文した。
ここのお店のクリームソーダは、ちょっとかわっている。
長方形の銀のトレーに、左側にはソーダ水・右側にはアイスクリームと分かれてのっている。
ソーダ水は、デュラレックスのような分厚いグラスにたっぷり注がれていて、アイスクリームはというと、足の付いた銀製のカップの中に上品に盛られていた。
大好きなウエハースといっしょに・・・
グラスや銀食器がピカピカな上に、店内の薄暗さも手伝って、どれほどソーダ水の色が 深く鮮やかだったことか・・・・・
ソーダ水とアイスクリームを混ぜたりしないで、別々にゆっくりと口に入れた。
いろんな意味で緊張しながら、ゆっくりと口に入れた。

5歳の途中で引越したので、わたしのクリームソーダの思い出は、ここでおしまい。
しばらく いろんなお店で注文したけれど、ソーダ水とアイスクリームが別々に出てくるお店には、出会わなかった。
わたしにとって目新しいクリームソーダは、ストローを入れてひと混ぜしたら、ソーダ水が濁るわグラスからこぼれるわ・・・
コドモゴコロに悲しい思いをして、それ以降クリームソーダを注文するのをやめた。


ふーか


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