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カントリーエッセイ
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2003/11/15号
クッキー

いつごろからでしょうか?
お菓子の種類って増えたと思いませんか?
秋になって気温が下がってくると、スーパーマーケットのチョコレート売り場が賑やかで
ついつい足を止めてしまいます。

わたしの子供時代は、まだまだお菓子の種類がいまほど豊富ではなかった時代(ころ)。
家に電子レンジやオーブンが普及する少し前で、手作りのおやつといえばもっぱらドーナツやプリン、ようかんなど揚げたり蒸したりするおやつの時代です。
そんな時代に、仲良しだったKちゃんの家には大きなガスオーブンが備え付けてあり、そこではじめてクッキーを焼かせてもらった日のことは、今でもドキドキするくらいよく覚えています。

あのクッキー型は外国のモノだったのかも知れません。
Kちゃんのお母さんは、かわいい型をたくさん持っていて、めずらしくてたまらないわたしは、まるで宝石を見せてもらったときのように、手のひらにそっとのせて しばらく眺めていました。
クッキー型で生地を抜いたり、自分の好きな形を作ったり・・・
オーブンの中でジワジワと膨らんでくるクッキーを見て、「これは魔法の箱だ!」と、真剣に思っていました。

しばらくして出来あがったアツアツクッキーは 少しおやつに食べて 残りはお土産に持たせてくれました。
そのときのクッキーの入っていた入れ物が、これもまたすごく素敵だったんです。
ピンクの色画用紙を2枚重ねてブーツの形に切り、足が入る部分だけ残して 周りにパンチで穴をあけ、毛糸を らせん状にくぐらせながら 2枚をつなぎあわせたショルダーバックになってたんですよ。
Kちゃんとわたしと ちゃんとふたつ用意してあって、まるで夢のような1日でした。

次から次へと発売される おしゃれなお菓子もおいしくてよく買いますが、あの日Kちゃんのお家で焼かせてもらった 甘くて素朴なクッキーはいつまでも忘れられない特別なお菓子です。
毎日を心豊かに暮らしていたKちゃんのお母さんの思い出と一緒に、いまもわたしの心の中にしまってあります。

ふーか    


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